インターネット上のサービスを行う場合のいわゆる「3種の神器」の1つが利用規約です。
こちらは事業者が、Web上で商品やサービスの契約をする際、利用規約全文を見せる状態にした上で、同意をとる(実際には全文をスクロールして読む仕様にするか、あるいは、リンクを貼って読めるようにするなどし、チェックボックスにチェックをしてもらう)ことで有効な契約となります。
なお、同意をとる仕様をせずに、利用規約全文を見れるようにしていたとしても、契約の内容にはならず、利用者は何ら制約されません。
利用規約自体が有効に成立したとしても、その内容が全て有効とは限りません。
内容は個別に法律に反していないかチェックされることになります。特に、事業者VS消費者の契約になりますので、全て消費者契約法の適用を受けることになります。
上記事件でも適用された消費者契約法8条を見てみましょう。
簡単に言うと、①責任を一切免除したり、免除するかどうかを事業者が決められるような条項は無効、②事業者に故意や重過失ある場合に責任を一部免除したり、免除するかどうかを事業者が決められるような条項も無効というものです。
×「本サービスに関して利用者に生じた損害について、事業者は一切負いません。」はダメなのです。責任を限定するとしても、経過失の場合には責任を負わないとすることしかできないわけです。
この規定により、上記事件においても、消費者契約法に反し、無効とされました。
ただ、この結論はDeNAのような大企業であれば、当然リーガルチェックをして予測していたことでしょう。
それでもこのような規定を維持していたのは、推測ですが、この規定による一定の影響、すなわち、これを見て諦める人が一定数いることを狙ったのかもしれません。
実際、何らかの申し込みをする際に、「〇〇内の事故については一切責任を負いません」という表記はよく見かけます。
これも消費者と事業者との契約ですので、基本的に消費者契約法に反し、無効となります。そのため、事業者に過失があって利用者に損害を与えたような場合には責任は逃れられません。
しかし、その知識がない方からすればこの条項があることで、無理だろうと諦めるわけです。この効果が相当程度あることは間違いないでしょう。だからこそ意識的ま無意識的かはともかく、このような規定をしている事業者が多く存在しているわけです。
また、似たようなものとして、施設内などで、「貴重品の盗難について一斉責任を負いません」と掲示されている場合もあります。このような場合、そもそも規約として合意していなければ効力すら生じません。これに有効か無効かの前に契約として成立すらしていないことになります。ただし、同じように掲示を見て諦める方がおられるでしょうし、そうでなくても注意喚起としての意味を持ちます。つまり、事業者の管理責任を考える時に、利用者に注意喚起していたと主張する材料となるわけです。そうであるからといって一律に過失が否定されるわけではないですが…
これに対して、事業者VS事業者の契約であれば、消費者契約法は適用されません。
とはいえ、さすがに「損害について一切責任を負いません」というのは一方的でしょう。
こういう場合は、損害の上限額を設定しておくことや軽過失による場合に責任を負わないようにしておくことが無難です。
過去にも利用規約の内容があまりにも一方的であるため、炎上してケースが数多くあります。
利用規約を作成するにあたっては、違法かどうか、炎上するような不当な内容になっていないかどうかという最低限のルールが必要です。
そして、それを超えて、利用規約に、事業の理念や想いを詰め込めれば、より顧客イメージをアップする1つのマーケティングにもなりうるかもしれません。