久しぶりにNHKの朝ドラにはまっています。
ファミリアの創業者をもとにした朝ドラ以来です。
主演は伊藤沙莉。日本史上初めて法曹の世界に飛び込んだ、一人の女性の実話に基づくオリジナルストーリー。困難な時代に立ち向かい、道なき道を切り開いてきた法曹たちの情熱あふれる姿を描く。
しかも、今回は日本史上初めて法曹になった女性のお話し。
弁護士の中には、弁護士ドラマは現実離れしていて観ないという方も多いようですが、私は全く気にしないタイプです。
ただ、このドラマは法律的な監修も非常にしっかりしており、法律的な内容もあえてそのまま説明している印象です。
当時の法律(条文)をそのまま紹介したり、裁判官が言い渡す判決でも法律構成を明示したりしています。
その要因もあり、法曹にも非常に高評価を受けているようです。
あっ!という間に五週目まで終わってしまいましたが、毎日続きが気になり、楽しみにしています。
最近では、父親の裁判で、自白の取り調べの問題点を指摘するシーンがありましたが、
ここでも主人公の寅子(ともこ)が当時の条文そのものを指摘していて、リアルで素晴らしく感心しました。
法律実務家にとって条文(法的な根拠)がいかに重要かを示しているかのようでした!
ちなみに、「虎に翼」に惹かれるのはストーリーだけではありません。
毎日流れて耳になじむ、ストーリーにマッチした主題歌も魅力的です。
主題歌は米津玄師さんの「さよ〜ならまたいつか!」 このドラマのために書き下ろした曲です。
よくドラマで流れる1番がいいのは言わずもがなですが、2番の歌詞を見ているとこちらもドラマで流して欲しいほど素晴らしいものでした。
「したり顔で 触らないで 背中を殴りつける的外れ
人が宣(のたま)う地獄の先にこそ わたしは春を見る
誰かを愛したくて でも痛くて いつしか雨霰
繋がれていた縄を握りしめて しかと噛みちぎる
貫け狙い定め 蓋し虎へ どこまでもゆけ
100年先のあなたに会いたい 消え失せるなよ さよーならまたいつか!」
主人公のすすむ道を、その母は「その先は地獄よ!」と言い放って当初反対をするのですが、当時の情勢を考えると言い過ぎではないのかもしれません。
「人が宣(のたま)う地獄の先にこそ、春をみる」
この歌詞は素晴らしい表現力です。
また、昔の判決文でよく使われていた「蓋し」という言葉が主人公寅子(とみこ)のあだ名でありタイトルにもある「虎」(とら)と結びつき、「蓋し虎へ」という響きが絶妙です。
女性の地位向上の物語の主題歌を男性である自分が歌う意味と向き合った米津玄師さんのインタビューも非常に感銘を受ける内容でした。
なお、モデルとなったのは日本初の女性弁護士の一人で戦後に裁判官も務めた三淵嘉子(みぶちよしこ)さん(1914~84)です。この方の自伝も読みました。
非常に厳しい時代背景の中で、戦争おも乗り越えて初めての裁判官となった生き方に改めて感銘を受けるとともに、途を切り拓いた先人への敬意を改めて抱きました。
【あらすじ】
三淵(旧姓:武藤)嘉子は明治大学法学部を卒業し、日本初の女性弁護士となるが、戦争ですべてを失うと、新たな思いを胸に差別のない司法を実践すべく裁判官になることを決意する。34歳で裁判官に就任後、アメリカで家庭裁判所を視察。帰国後は各地の家庭裁判所で社会的弱者に目を向け、精力的に活動した。――逞しくしなやかに生きた女性法曹の先駆者の生涯を描く。