「相続探偵」(第9話)から弁護士と学ぶ遺言と相続!

相続探偵(1)(イブニングKC)
相続探偵(1)(イブニングKC)

  日テレ土曜9時で放送中の「相続探偵」!

 

 「第九話 三つの遺言書」がNetflixでも配信開始されました。

 

【あらすじ】

 バス事故の誤判を巡り、灰江とハゲタカは元裁判官を追及。灰江の実の父で最高裁判事・地鶏の圧力が絡む中、親子対決の行方は3つの遺言書に委ねられる。相続探偵の運命は以下に!?

 

 今回の物語は、バス運転手だった、今は亡き灰江の育ての父が起こした交通事故の裁判の話から始まります。

 

 被害者のいる交通事故は、それ自体が自動車運転過失致死傷などの犯罪に当たって刑事裁判になるとともに、被害者との関係での損害賠償金の支払いは民事裁判にもなりえます。

 ただ、被疑者が死亡していた場合は亡くなった方に処罰を課すことはできませんので、被疑者死亡として事件は終了することになっていきます。他方で、損害賠償金の支払いについては、相続人が相続放棄しない限り、債務として引き継ぐことになります。これを配偶者らが引き継いで、民事裁判で争っていたということでしょう。

 

 

 当初は突風による交通事故としてみて、無過失とみられてましたしたが、父親が居眠りをしていたという週刊誌報道が出され、 風向きが変わっていきます。一審を担当した裁判官に、当時「最高裁事務総局人事局任用課長」という役職にあった人物から、圧力がかかり、判決が歪められたというのです。

 

 確かに、どんな組織でも人事権をもっている者の言うことにはなかなか逆らえないものです。最近問題になった就活生へのハラスメントなどはその典型ですね。

 そして、この「最高裁事務総局人局局任用課長」という聞き慣れない役職!

実際に存在しており、その特徴として、

・裁判官人事に特化したポストであり、裁判官の人事評価や再任等に関する重要な事務を担当

・その後、最高裁事務総局人事局長→最高裁事務総長→東京高裁長官→最高裁判事という一直線のキャリアパスが存在する

・最高裁判事になる確率が高く、さらにその約50%が最高裁長官になる

・裁判官の中でも5年に1人程度しかこのポストに就けないほど狭き門

 ということです。日本の司法において、非常に重要で影響力のある役職と言えるでしょう。

 

 

 この判決では、科学的な証拠まで簡単に排斥され、”居眠りしていないとの証明はない”として多額の賠償金が認められ、判決文の一部が紹介されていました。

 ちなみに、実際の民事裁判でいうと、損害賠償請求をする被害者が加害者の過失を立証しなければいけません。

 刑事事件として捜査されて処罰を受けているケースでは、その裁判資料の一部を活用することで立証しやすいのですが、刑事事件が被疑者死亡で終了しているとなると、実際に立証することは決して容易ではないでしょう。むしろ”居眠り運転をしたこと”を証明しなければならないのです。その意味で、判決が歪められたと言えるのかもしれません。

 

 

 物語の中では、国に対し、国家賠償法に基づく損害賠償請求として、裁判官の審理や判決自体の違法性を追及するという話もありました。

 国にせよ、地方公共団体にせよ、損害賠償請求をするには常にこの規定が根拠となります。ただ、これまで、裁判官の審理や判決自体が国賠法上の違法とはっきり認められたことはないでしょう。非常にハードルが高く、立証することは極めて難しいでしょう。

 

 ちなみに、灰江の発言で、権力者たちの癒着について、”嘘っぱちの三権分立”というセリフがありました。

 ただ、三権分立というのは、もともと国民に主権があることを前提に、その権限を委ねられたものなので、本来国民によるチェックを機能させることが大切です。

 その中でも、残念ながら、最も機能していないのが”最高裁判所裁判官に対する国民審査”でしょう。

 衆議院議員総選挙の際に同時に行われますが、「×」をつけて罷免の意思を表明しない限り、信任したことになります。これまで1人たりとも罷免された裁判官はおらず、全くプレッシャーにはなっていないのが現状です。

 ただ、2024年の衆議院議員選挙の際の国民審査では6人中4人が10%を超える罷免率を記録し、最も高かった今崎幸彦長官は11..46%にのぼりました。まだまだですが、過去20年で最も高い罷免率だったようです。最近では調べればどの裁判官がどんな判決を出し、どのような補足意見や反対意見を出しているか調べることもでき、少しずつ関心をもってもらっているようです。詳しく分からなければ、ひとまずは国民審査を機能させるべく、プレッシャーをかけるためにも全員に「×」を書くのがオススメします(それでも罷免される50%には程遠いので・・・)。

 

 なお、過去話の講評は以下からご覧ください!

 

    第一話「或る小説家の遺言」

 第二話「その女、危険につき」

 第三話「マリーアントワネットの相続」

 第四話「京都 老舗和菓子屋の変ー前編ー」

 第五話「京都 老舗和菓子屋の変ー後編ー」

 第六話「笑福湯の生前相続」 

 第七話「死後認知〜七人の隠し子〜」

 第八話「死後認知〜八人目の隠し子〜」

 


 相続や遺産分割は合理的な法律と不合理な感情が入り混じる複雑な事案が多くあり、なかなかドラマのようには解決しないものです。ただ、当職は弁護士として15年、相続や遺産分割については調停や審判、関連訴訟等も多く経験しており、交渉で解決する重要性も意識しています。もし相続に関連してお悩みの方はご相談ください。