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日テレ土曜9時で放送中の「相続探偵」!
「第四話 京都 老舗和菓子屋の変ー前編ー」がNetflixでも配信開始されました!
第一話〜第三話に続き、弁護士の立場から考察しました。
なお、過去話の講評は以下からご覧ください!
【あらすじ】
老舗の菓子匠・鳳凰の大将が死去。遺言書に記された後継者は、大将のめかけの子で若き天才職人・野心ではなく、嫡男の正臣だった。灰江は遺言書が偽物であることを証明してほしいと頼まれる。
正妻に子供が生まれず、結婚してくれると信じて子どもを産んだのに、その後に正妻に子供が生まれ、めかけ呼ばわりされていた女性が今回の灰江の依頼者。その息子はアホボンと呼ばれる正妻の子と違い、天才職人でした。
この設定、全く同じケースではないですが、なかなか子どもが生まれない経営者が、親族を後継者的なポジションにつけたところ、子どもが生まれて争いの火種となるというケースは確かにありますね。はじめから期待がなければ別ですが、一度与えられた期待を奪われるというのは、人間にはなかなか耐え難いものです。
法曹界では定番の格言も2つでてきました。
1つ目は、"相続は争族"
円満な相続というのは想像以上に難しいものです。真実は1つでも、人の立場によって事実はかわるもの、家族や親族にはそれまでに長年蓄積された歴史があり、その溝が相続によって表面化することになりがちです。
2つ目は、"権利の上に眠るものは保護されず"
いくら法律で権利が認められていても、それは行使しない人は保護されません。残念ながら、法律は知っている者の味方なのです。その重みを指摘する言葉ですね。
大将の死後、遺言書が発見されました。かなりの達筆!本筋とはズレますが、万が一、遺言書が達筆すぎて読めない場合、その読み方や解釈から争いになるリスクまでありますね。流石にそういう相談を受けたことはありませんが・・・
遺言書の内容は、正妻と嫡男に2分の1ずつ相続させるというものでした。
ちなみにこの遺言書、特に封筒には入っていない状態でしたが、本来、自筆証書遺言が発見された場合、その状態を公的な記録に残すために家庭裁判所に申し立てて”検認”という手続きをとる必要があります。これは遺言が有効か無効か判断する手続きではなく、その時点でどんな遺言書が存在しているかを記録に残すものです。廃棄されたり改変されたりするリスクがありますから、状態を保存するための手続きです。もし封筒に入れて封がされている場合には、検認手続きで開封することになります。
上記の遺言書が有効な場合でも、めかけの子が認知されていれば、遺留分(法律上の相続人に求められる最低保障の取り分)として8分の1は請求できることになります。
この認知というのは法律上の父子関係を発生させるもので、これをすることで法律上の相続人たる子と認められることになるからです。遺言書がない場合の法律上の取り分は、正妻が2分の1、子ども2人は4分の1ずつとなることから、遺留分はその半分の8分の1となります。
ただ、灰江への相談は、そもそも筆跡が本人のものではなく、偽物であることを明らかにして欲しいというものでした。
生前、口頭で和菓子店の鳳凰というブランドは正妻の子に、作業場と売り場は相談者の子にとはっきり言っていたというのです。
その後、なんやかんやあり(ネタバレ防止)、灰江の仕掛けによって真の遺言書が見つかります。
真の遺言書には、口頭で聞いていた内容と同様に、現金や株などの金融資産と鳳凰というブランド(商標権)は正妻の子に、作業所と売り場は相談者の子どもにと書かれていました。
なお、本来なら、この内容でも正妻には4分の1の遺留分が認められることになりますが、真の遺言書を隠匿していたことから、相続の資格を失う欠格事由に当たり、遺留分すら請求できないことになります。
家族経営の会社のケースの場合、後継者や経営権の争いも絡んで、相続が熾烈な争いとなる可能性は高くなります。
やはり、通常よりも火種となる部分が多いからです。実際に相続と後継者問題が絡む複雑な相続案件というのは頻繁にあり、これまでにも相談や依頼を受けてきたことがあります。
特に、飲食等の店舗の場合、それまでの経営への関与や経営方針に加え、そのスキルも影響するところで、家族それぞれに蓄積した想いがあり、生前によほどしっかり整理しておかなければ円満な相続とはなり難いものです。
名と実、のれんと現場、あえて真っ二つに分けた被相続人の意思や願いはどこにあるのか、これがはたしてWin-Winな相続なのか、次週の後編に期待です。
相続や遺産分割は合理的な法律と不合理な感情が入り混じる複雑な事案が多くあり、なかなかドラマのようには解決しないものです。ただ、当職は弁護士として15年、相続や遺産分割については調停や審判、関連訴訟等も多く経験しており、交渉で解決する重要性も意識しています。もし相続に関連してお悩みの方はご相談ください。
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