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日テレ土曜9時で放送中の「相続探偵」!
「第五話 京都 老舗和菓子屋の変ー後編ー」がNetflixでも配信開始されました!
第一話〜第四話に続き、弁護士の立場から考察しました。
ただ、今回は相続の問題が真の遺言書により、法的には解決した後の問題にはなります。
【あらすじ】
大将の遺言書により、老舗菓子匠『鳳凰』が存続の危機に。。”味”を継いだ野心の店は客足が伸びず。
”看板”を継いだ正臣の店も人気が低迷。共倒れの危機を前に、遺言書の真意を灰江が解き明かす…!
今回は第4話の続編。
老舗菓子匠「鳳凰」の先代が亡くなり、後継者の候補としては正妻の子・正臣とめかけといわれる灰江の依頼者の子・野心!
前回の話の中でようやくたどり着いた真の遺言書は、
”鳳凰というブランドやのれんは正臣に、作業所や売り場は野心に相続させる”というものでした。
名と実、のれんと現場、あえて真っ二つに分けた被相続人の意思や願いはどこにあるのか、そこを灰絵が解き明かすのが後編です。
言うならば、前編は実際に相続が法的に決まるまでの話、後編は法的な帰結が決まった後の話ですね。
この遺言書による相続のあと、正臣は「鳳凰別館」や「鳳凰アネックス」という新店舗を開き安価な商品で成功しました。
一方、野心は「野心」と改名した店舗で高価格路線を維持しましたが、客足が遠退き、経営が苦境に陥ります。
ただ、正臣の店舗も、結局、先代の味を出せる職人はおらず、評判を落とし、徐々に売上げは下がっていきます。
遺言書は、このような息子たちの状況を見据え、店が潰れることを仕組んだものだったのか?!
そのタイミングで、灰江は、2人の権利をそれぞれ20億円ずつで買い取るという話を持ちかけます。
伝統、経営を支える支店、「鳳凰」の大看板、息子たちはどのような決断を下すのか・・・
今回のストーリーは、法的には真の遺言書により法的には一応の解決をした後の問題ですので、法的な問題等はほとんど出てきませんでした。
そこで、今回は、このような相続によって起きる家族経営企業の事業承継に関する問題について、少し紹介をしておきます。
この問題は、意外と日常的にどこでにも起きている問題です。
家族経営で会社や事業を行っている場合、後継者をどうするか問題は避けられません。
もし先代が遺言書すら残さず、突然亡くなれば、法的にも配偶者や子どもたちが権利を持つことになりますので、後継者を誰とするのかを巡って激しい対立が起きることがあります。それを少しでも避けるには何よりもまずは遺言書の作成が必要でしょう。
ただ、いざ遺言書を作るとなっても、
①後継者として1人に事業に関する財産を集約させ、他の相続人には金銭等で代償させるか、
②それとも「相続探偵」のように分割する形で承継させるか、判断を迫られます。
①については、事業に関する地位や力、ブランド・のれんを1人に集中させることになるので、事業としてはやりやすく、うまくいく可能性はあるでしょう(もちろん後継者の資質次第ですが…)!
ただ、この場合、会社に関する不動産や会社の非公開株式を1人に集約させることになるため、その分だけ他の相続人に支払うべき多額の金融資産が必要になってきます。その原資となるお金をいかに用意するかが問題となることがあります。
②については、相続人らに平等に分け与える可能性が高まるので、先代としては心理的にやりやすいものです。きっとうまくいくはずという幻想を抱いて自分を納得させてしまうのかもしれません。
しかし、本来相互に補完する関係にあるはずの「名」と「実」を分ければ、かえってブランド価値を喪失し、両者ともに弱体化させるリスクがあります。飲食店業界や製造業等でも実際に起こり得ることです。
特に伝統ある事業では、ブランド価値と実務能力やスキルが不可分な関係にあるため、これらを分割することにより、衰退リスクが高まると言えるでしょう。
ドラマが示す「分割相続の危険性」は、現実の家族経営企業でも日常的に発生する課題です。
分割相続によるリスクを意識し、法的に有効な遺言を作成しつつ、経営的な合理性も意識した内容にする必要があるでしょう。
次回、第6話ですが、いよいよ灰江の弁護士時代の横領疑惑の話が出てきそうですね。「父親のバス事故による賠償金」というのも気になるところです。
なお、過去話の講評は以下からご覧ください!
相続や遺産分割は合理的な法律と不合理な感情が入り混じる複雑な事案が多くあり、なかなかドラマのようには解決しないものです。ただ、当職は弁護士として15年、相続や遺産分割については調停や審判、関連訴訟等も多く経験しており、交渉で解決する重要性も意識しています。もし相続に関連してお悩みの方はご相談ください。
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