不動産賃貸物件のサブリースには要注意!〜「逆ざや」サブリース説明義務違反判決を踏まえて〜

「賃貸住宅経営(サブリース契約)に関する契約を締結する前に」
「賃貸住宅経営(サブリース契約)に関する契約を締結する前に」

 サブリース契約とは、貸主とサブリース 業者(不動産会社)が賃貸借契約(マスターリース契約)を締結し、サブリース 業者(不動産会社)が貸主となって転借人に転貸する契約です。

 

 この契約の一番大きなメリットは、煩雑な賃貸管理を業者に丸投げしつつも、空室かどうかに関係なく、毎月定額の家賃を支払ってもらえることです。この部分だけを聞けば、確かにオーナーには非常に魅力的に映ります。

 

 ただ、だからこそ、そのデメリットがサブリース業者から十分に説明されなかったり、オーナーが理解することがないまま契約してしまう可能性があります。

 特に、サブリースであっても借地借家法という借主を守る法律が適用され、貸主側からは簡単に解約できない(「正当事由」が必要)ことには注意が必要です。

 

 はじめは設定された賃料も高く十分な収益を確保し、利回りが良くても、期間が経てば当然、賃料は減額されていきます。それでも手数料は同じ割合をずっととられつづけ、また修繕費等もオーナーが負担していかなければいけません。下手をすれば徐々に赤字になっていく可能性があります。しかし、そうなっても、この契約は解約できず、解約できなければ、まともに売却することもできないという可能性もあります。

 こうなるとがんじがらめになって、もはや何もできない状況に追い込まれかねません。

 

 サブリースの強調されたメリットや当初の楽観的な説明を間に受けず、賃料の減額や修繕費等を十分に見込んだ計画が必要でしょう。


 

 このサブリース に関して、最近、少し注目する判断が示されましたので、全国賃貸住宅新聞の記事を引用しつつ、ご紹介します。

 

全国賃貸住宅新聞 ニュース|2023年09月22日逆ざや説明せず販売、不法行為

「東京地裁で5日、マスターリースをセットにした収益不動産の販売手法に一石を投じる判決が言い渡された。入居者から支払われる賃料より、オーナーに支払う賃料のほうが高い「逆ざや」となっていることを説明せず、投資用不動産を販売した不動産会社の不法行為を認め、オーナーに対する損害賠償の支払いを命じた。」

 

 この事案では、収益不動産を購入したオーナーが原告となって、販売業者を被告とし、「逆ざや」であることを知りながらそのことを説明せずに物件を販売した行為などについて、合計約1720万円の損害賠償を求め、2021年4月に東京地裁に提訴されている。

 判決では、「逆ざや」状態をオーナーに説明しなかったことについて、信義則上の説明義務違反にあたるとして不法行為と認めた。その上で、損害賠償の金額について、物件の販売価格全体ではなく、契約書記載のマスターリース賃料と物件価格から、利回りを算出。同利回りを基に、実際の賃料から物件価格を再度算定し、実際の販売価格との差額、約1475万円を損害額と認定した。

 

 「逆ざや」は本来サブリース をしている不動産業者にとって受け取った賃料より大きな金額をオーナーに支払う逆転現象が起きているものであり、何らメリットがないように見える。それでは、そもそもなぜこのようなことを起きるのだろうか?!

 

 上記事案のように、不動産収益物件を売却する際、販売価格を算出することになりますが、「逆ざや」となっている高額な賃料をもとに物件価格を査定し、利回りを算出して購入希望者に伝えることで、実態以上に魅力的な物件に見せることができるわけです。

 

 その設定された「逆ざや」の賃料が支払い続けられればそれはそれで問題はないのかもしれませんが、経済的な合理性がなく、それは考えられないでしょう。実際には、当該物件を購入した後、サブリース をしている不動産業者が破綻して当該賃料が支払われなくなったり、段階的に賃料が減額させられたりするリスクがあります。

 こうなると詐欺的な手法により、実態に反した評価で物件をつかまされ、実際にその損害をオーナーが被ることになります。

 このようなことを避けるためには、賃料の設定やそれをもとにした物件の査定が相場からしても合理性のあるものかどうか、不動産業者の説明を鵜呑みにせず、自分で確認する必要があるでしょう。 

 不動産投資をするなら、相応のリスクがあることを自覚し、無知につけ込まれないよう理論武装が必要なのです。

 

 ただ、上記判決の影響として、まだ確定こそしていませんが、借上げ賃料を水増しすることにより、物件価格を高く設定するスキームに警鐘を鳴らす効果があるでしょう。

 


 サブリースの注意事項については、各省庁がパンフレットを作成して注意喚起しておりますので、こちらもご参照ください。

「賃貸住宅経営(サブリース契約)に関する契約を締結する前に」
「賃貸住宅経営(サブリース契約)に関する契約を締結する前に」

 なお、国土交通省のウェブサイトでは『サブリース住宅標準契約書』まで公表してくれていますので、こちらもご参照ください。