親族法に続いて、相続法の口語解説本をAmazon Kindleで電子書籍を出版しました。
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親族法バージョン【後回しにしがちな民法・親族法の本質を最短で理解する本】
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相続法も、親族法と同様、何となく知っている用語が多く、日常生活のイメージに引っ張られてしまうことから、かえって法律的な仕組みや流れが整理しにくいところがあります。
こちらの本では、全体の構造をまずはしっかりとおさえつつ、できる限り定義などをおさえながら解説するようにしています。
基本書などが省略している前提部分をできるだけ言語化しつつも、予備校のテキストなどよりはより本質的な理解ができるように工夫しています。
また、重要条文についてはできるだけそのまま引用しています。法律を勉強している方は条文を含めて読んでただき、法律そのものまで必要なければ条文部分は読み飛ばしていただければ素早く全体を読めるかと思います。
全80頁、販売価格は880円とさせていただいておりますが、Amazon Kindle unlimitedなら無料で読めますし、30日間無料キャンペーンをしていますので、こちらをご利用いただき、お読みいただければ幸いです。
ここでは「はじめに」の部分と相続法の全体をイメージしていただく部分を抜粋して紹介しておきます。
以下、本書より抜粋。
はじめに
本書は、親族法に続き、民法の中でも、本やテキストではどうしても流れがつかみにくい相続法について、全体像やポイントを理解してもらうために執筆しました。
”基本書よりはわかりやすく、予備校のテキストよりは本質的に!”というモットーで書きました。実務的な取り扱いや流れも踏まえ、重要な条文は本文に引用しながら、口語で解説しています。法学部生等で民法を勉強した後に、相続法を初めて勉強する方はもちろん、各種士業の資格試験勉強をされている方々にとっても参考になるのではないかと思います。法律自体の勉強している方は、本文で引用している重要条文もぜひ文言を追いながらお読みください。そうでない方や全体をざっと確認したい方は、ひとまず条文引用箇所は読み飛ばしてください。
まとめて扱われることが多い親族相続のうち、親族という分野は本来1人の個人は個人として独立しているものの、その血族関係や婚姻関係などによる特別な身分関係をもとに一定の法律的な権利義務関係が生じることを認め、法律婚や親子制度の詳細を規定しているものです。
これに対して、相続という分野は、ざっくりと言えば、ある人が亡くなった場合の財産関係を親族等がどのように引き継ぎ、どのような処理をするかを定めたものです。相続における実務上の大きな分岐点としては、被相続人の生前の意思として遺言が残されているかどうかが重要となります。実務的にも、相続の相談があれば、まずは遺言があるかどうかを確認するのがセオリーです。遺言による相続の流れと遺言がない場合の法定相続の流れについて、民法は定めています。どのような事情を考慮し、どのような処理をしているのかを学びましょう。
実際に制度やルールがどのようになっているかを覚えることはもちろん大切ですが、そもそも日本の法律として民法がどのような意図でどのような制度づくりをしたのかを理解しましょう。本書はそのような観点から解説することを重視しています。
法律の勉強をするときに気をつけて欲しいことは、全体像を常に意識するということです。複雑な事柄や応用的な議論を学んでいると、つい視界は狭くなっていきます。意識をしていなければ、いわゆる「木を見て森を見ない」状態になりがちです。このようになってしまうと、結局、自分が学んでいる知識が、どこでどのように役立つのか、アウトプットへの繋ぎ方が分からなくなっていきます。常に全体の位置づけや手続きの流れなどの全体像をイメージしながら、今、どの部分を学んでいるかを意識しましょう。
全体的な部分(総論)を落とし込むことと個別の部分(各論)を落とし込むことは法律の勉強の両輪です。どちらか片側だけを完璧にしようとしても、不可能です。一方だけの理解は決して深まりません。あくまでも全体の理解と個別の理解を並行して進めていくことが望まれます。
このような観点から、本書では3ステップとして、以下の流れで解説します。
1 相続の全体の流れをイメージする
2 相続編の条文の構造を把握する
3 相続法15 のポイントを理解する
このような流れで学ぶことで、全体像を常に意識しつつ、さらに短時間で複数回全体を回すような感覚で学ぶことができるのではないかと考えています。
法律の勉強において、重要なのは、言葉の定義・意義を正確におさえることです。これが正確にできていない限り、法律はなかなか理解できていません。
例えば、相続法の分野でも「相続財産=遺産」「相続人」「遺言」などの言葉は日常的にも耳にすることがある言葉です。相続法を学んだ方でも、何となくの意味合いは分かっていても、民法上の正確な定義まではおさえていないものです。むしろ、言葉の日常的、国語的な意味合いがわかっているだけに、それに引っ張られてしまいがちです。その法律における意味、定義を正確におさえましょう(なお、全く同じ用語でも法律によって定義が異なることがあることにも注意してください)。当該法律ける当該法律用語の意味を理解できなければ、法律・条文の意味を理解するというのは無理な話です。
このことは、親族・相続はおろか、民法に限らないあらゆる法律に通じることです。定義を正確におさえるという意識は常に強く持ってください。
定義の理解の重要性に関連して、相続法の分野から1つ例を挙げておきます。
例えば、民放896条では、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。」と規定されています。
この条文から、相続の対象となる相続財産が「被相続人の財産に属した一切の権利義務」であることが読み解けます。すなわち、相続によって、「相続人」という主体が、「相続開始の時」という基準時において、「被相続人の財産に属した一切の権利義務」を対象として、これを「承継する」という法的な効力が規定されています。
それでは、「相続人」とは何者なのでしょうか。これは被相続人から相続財産を承継する法的な資格のことを意味しています。相続人であるか否かと言うのは、相続財産を承継する資格の有無を意味することになります。
では「相続開始の時」とはいつでしょうか。これはイメージ通り被相続人の死亡時なのですが、このことは考えることではなく、別の条文にはっきりと答えが書いています。複数の条文を組み合わせで初めて1つの条文の意味が正確に理解できるようになっています。
このように法律上の定義や意味合いについて、条文を組み合わせて読解していく思考過程を学ばないといけません。
このような観点も踏まえつつ、何よりも条文にどのように書いているかを意識して勉強しましょう。そのような狙いから、本書絵は重要な条文をなるべくそのまま条文全体を(項を省略せず)を引用するようにしています。ただし、もし予備試験や司法試験など、本試験で六法を使いこなせるかが問われる試験を受ける方は、できる限り、ご自身でも別途六法を引くようにしてください。この六法をひくと言う作業自体がとても大切です。本試験で六法を使いこなすための有効な訓練になります。
六法を引いて条文を読む際には、1つの文章として読むのではなく、「法律要件は何か?法律効果は何か?」という観点から、分析的に読む癖をつけてください。最終的に、出題された事案に法律を適用することができるようになるためには、この法律要件と法律効果の分析的理解が必須となります。
本書は基本的な理解に資するものであり、主としては法学部の試験や各種士業の短答試験に役立つものです。とはいえ、予備試験や司法試験の論文でも親族法や相続法が関連する問題が出題される可能性は十分にあります。本書で書いているような基本的理解こそ、予想外の出題に対応できる能力に繋がります。その観点からも本書を通じてポイントを理解していただけたら幸いです。
このような狙いから本書では主要なポイントや基礎的な部分、全体の流れを重視して掲載しています。できるだけ分量も減らし、短い時間で読めるように、あえて応用部分や細かい部分は省略していますので、きっちりと押さえる必要がある方は、基本書等で知識を補充していただくようお願いします。
なお、本書では、特に潮見佳男先生の「民法(全)」第3版の整理を参考にしつつ、著者の言葉でより簡潔に解説しております。
Ⅰ 相続法の全体の流れをイメージする!
そもそも民法ではパンデクテン方式という形式がとられています。これは、簡単に言えば、共通のルールを前出しするというものです。そのため、民法は、全てに共通するルールとして総則編が前出しされた上で、物権編、債権編、親族編、相続編と続く構成になっています。また、各編の中でも、さらにその編における共通ルールが前出しされ、各編の第1章として「総則」が規定されています。この構成については条文の目次などを見るときに意識しておいてください。
このうち、親族については、日常用語とは区別する法律的な意味合いで、親族の範囲を明確にした上で、法律によって保護される婚姻関係と配偶者の法的な保護、法律上の親子関係(分娩による母子関係と嫡出推定や認知などによる父子関係)の認定方法を確認し、法律上の親子関係を作る制度としての養子縁組、親が未成年子に対して有する親権などについて規定しています。つまりは、ざっくりと言えば、本来、個人個人は1人の人として独立しているわけですが、親族法では一定の血縁やそれ以外の意思表示などによって生じる密接な関係をもとに、法律的な権利義務関係を認めていることになります。
これに対して、相続については、ある方(これを相続される人という意味合いで被相続人と言います)が亡くなられた場合に発生するもので、その亡くなられた被相続人の全ての財産(=相続財産=遺産)の処理について規定しています。親族が生前の法的権利義務の問題と位置付けるなら、相続はある方が死亡した場合の死後の親族間での財産関係の処理に関するものと位置付けることができるでしょう。
この相続は死亡によって始まります。そもそも人は出生によって権利主体となり、死亡と同時に権利主体性を失うことになります。そのため、人が所有していた権利義務について、死亡と同時にどのように扱うかが問題となるわけです。これについて、民法・相続法では、相続人の財産は包括的に一体の相続財産として相続人に承継されることになります。売買契約などのように目的物を個別具体的に承継するのではなく、一体として処理しています。
この相続財産の処理方針としては、まずは被相続人が生前に有効な遺言書を準備していれば原則としてそれに従って相続財産を処理することになります。被相続人の財産だったわけですから、被相続人の生前の意思が最大限尊重されることになります。ただ、死亡によって効力が発生する遺言書について、事後的に被相続人の真意を確認する術はないので、どのような遺言書を有効とするかはあらかじめ厳格に決まっており、この方式を守らなければいけません。
他方、被相続人の生前の意思を明確に示すような有効な遺言書がなければ、法律に従って相続人間で決めていくしかありません。これが法定相続であり、このルールを主として定めています。また、このルールは遺言がなければこうなるという見込みがあってこそ、遺言の内容でそれをどのように修正していくかが決まりますので、遺言作成に当たってもおさえておくべき内容ということになります。この法定相続については、まずは誰が相続人になるかという相続人の範囲、当該相続人が包括的承継することができる相続の割合(法定相続分)を明確にしつつも、実際に相続するかどうかについては、相続の承認や放棄として、相続人の意思に委ねています。そして、相続を承認する相続人らは、遺産分割協議(調停や審判)によって相続人間で話し合うなどし、具体的に誰がどの相続財産をどれだけ取得するか、協議して決めることになります。相続人間の協議で決まればそれが望ましいのですが、どうしても決まらなければ裁判所がこれを決めることとなります。
これらの相続の枠組みでの処理に対して、その枠外の処理として、配偶者に認められた特別な居住の権利、遺言書によっても奪えない相続人の最低保障となる遺留分、親族に認められる特別の寄与分なども規定されています。
このように、相続の流れは遺言があるかないかによって大きく変わります。厳格な方式を守っている有効な遺言があれば、そこに被相続人の意思が顕れていることになりますので、それが最大限尊重され、その内容に従って相続財産が配分され、個別の財産を取得することになります。
他方で、遺言がない場合は、法律にしたがって相続されることになります。実務的には、まずは相続人が誰かを確定することになります。その上、相続財産として何があるのか、その詳細を資料収集しながら確認していきます(特別受益や寄与分など現実の相続財産に対して考慮していく必要があります)。相続人と相続財産が確定すれば、相続人間で、具体的に誰が何をどれだけ取得するのかを話し合って決めることになります。これが遺産分割協議です。この協議がまとまれば、相続人全員が署名押印する遺産分割協議書を作成します。協議が成立しなければ家庭裁判所に審判を申し立て、そこでも話し合いによる調停が成立しなければ、最終的には、家庭裁判所による判断を仰ぎ、審判によって個別財産の帰属を確定させることになります。
このような相続の全体像や流れをおさえながら、理解をすすめていきましょう。