ブロ野球選手に限らず、あらゆるスポーツにおいて、不満な結果に終わったときにミスをした選手に対する誹謗中傷が大きな社会問題となっています。
この問題に関して、横浜DeNAの関根大気外野手が自身へのSNSでの誹謗中傷に関して、一連の経緯を含めて示談金の金額まで公表することで、一石を投じています。
関根選手は、誹謗中傷に対し、情報開示請求をして加害者を特定し、加害者と示談が成立した案件の金額等を公表しました。これにより、抑止効果を願いつつ、SNSに誹謗中傷を書き込むことのリスクを示しました。なお、示談金については寄付されています。
このような活動自体、非常に勇気ある行動であり、称賛に値するでしょう。
報道されている概要は次のとおりです。
【記事の内容】
「死ねよ」「ゴミ」…SNSで誹謗中傷されたDeNA関根選手 開示手続き 5件示談で金額を公表 「抑止効果に」(神奈川新聞)
こちらの報道によりますと、具体的な経緯と誹謗中傷の内容としては、
2024年4月26日の巨人戦での死球を受けて出塁したのをきっかけに、SNSには「あなたの家族全員が事故死で死んでほしい」といった悪質な投稿がいくつも届いたとのことです。
そして、10月11日までに5件の示談が成立し、20代の学生や30代の既婚者らが応じ、示談金は1人最大で90万円、総額は415万円になったようです。
現在も引き続き、開示手続きをしており、反省の色が見えない投稿者には「侮辱罪」を含め刑事告訴の検討も視野に入れているようで、経費を除いて全てをこども食堂の活動を支援するNPO法人「むすびえ」(東京都)に寄付するとのことです。
SNSでの書き込みについて、それがあくまでも事実や考えへの批判であれば、それは表現の自由として保障されます。
他方、その書き込みが人格への非難に及べば、それは許されることはありません。
また、他人の外部的名誉を低下させたり、社会的信用を失墜させたり、危害を加えたりするようなものである場合は、名誉棄損、侮辱や脅迫の犯罪を構成する可能性すらあります。
著名人への誹謗中傷がやまない理由として、多くの人が、「悪意なく」むしろ「正義感」から行っていることが挙げられます。「正義」を掲げた行為ほど、一歩間違えれば悪質なことはありません。どのような理由があろうが、相手の人格を否定または攻撃する言い回しは批判ではなく誹謗中傷でしかないのです。
なお、侮辱罪の法定刑は、令和4年6月に「拘留又は科料」から「1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」に引き上げられています。
【法務省HP】侮辱罪の法定刑の引き上げQ&A (令和4年6月)
プロ野球選手に対しても、ファンとして、プレーそのもの(事実)に対しての称賛や批判は意見の論評として許される範囲もあるでしょう。一方で、人格的非難や脅迫的言動は何があっても許されるものではありません。
SNSを利用するのであれば、この点を決して混同してはいけません。”人類にSNSは早かった”とも言われますが、そう言っていても仕方がないので、子どもたちに対する教育を進めつつ、大人にこそ、ネットリテラシーを向上させるよう地道に周知していくほかないでしょう。