· 

”ブラック校則”問題とルールメイキング〜大阪地毛証明裁判〜

 私がスクールロイヤーをつとめている阪神地域の生徒指導担当者の集まりで、校則の見直しというテーマで、ブラック校則とルールメイキングについて、お話をさせていただきました。

 

 近時、話題になったニュースとして、大阪の高校に通う生徒が地毛証明書をの提出を求められ、不登校になった事案につき、裁判を起こしたというものがありました。こちらの裁判も、これまでの判例の流れにそい、校則自体の合理性を認めつつ、それに基づく指導は適法とした上で、その後の対応を違法としました。具体的には以下の通りです。

 

【事案の概要】

生徒は2015年4月に入学。同校の「パーマ・染色・脱色・エクステは禁止する」との校則があり、教諭らは生徒に対し、黒く染めるように繰り返し指導。「黒染めが不十分だ」として授業への出席や修学旅行への参加を認めないこともあり、それによって生徒は不登校になった。

【判決の内容】

①校則の内容について、華美な頭髪を制限することで生徒に学習や運動に注力させ、「非行防止」につなげるという目的などから適法と判断。茶髪に対する社会一般の認識に変化が認められるとしても、校則の合理性に対する判断には影響しないとした。校則をめぐって幅広く学校側の裁量を認めてきた過去の司法判断を踏襲した。

②教師らの頭髪指導についても「合理的な根拠に基づいて生徒の髪の生来の色は黒だと認識していた」などとして違法性は認められないとした。

③不登校になった生徒が3年生に進級した際、学校側が教室に生徒の席を置かなかったり、学級名簿に名前を載せなかったりした行為について「生徒は意気消沈し、教員らに不信感を募らせ、卒業まで高校に行けない状態が続いた」などと指摘。「生徒に与える心理的打撃を考慮せず、著しく相当性を欠く」などとして、不登校のきっかけとなった頭髪指導に違法性がないことを考慮しても学校側の裁量を逸脱して違法だとした。 

 現在の判例のスタンスからすれば、一定の合理性さえあれば、学校の裁量が広く認められ、校則自体が違法となるケースは極めて限定的でしょう。ただ、校則と言うものは、時に、社会のルールである法律や条例を超えて、生徒児童の人権を制約するものです。このような人権制約のおそれがある校則について、”適法でさえあればそれでいい”というのは妥当ではないでしょう。

 

 あくまで学校が掲げている教育目標や人材育成の観点から、それにそう一貫した校則を定めておくべきです。自主性のある生徒児童を育成すると謳いながら、校則でがんじがらめにすることは明らかに矛盾しています。

 終身雇用が保障されていた日本が右肩上がりの高度経済成長期であれば、統率され、ルールにしたがって右にならってやっていけばよかったかもしれません。

 しかし、型通りのことしかできなければAIにとって変われれる時代を生きる子どもたちには、課題発見能力・課題解決能力を身につけ、自主性をもって取り組み、多様な個性を発揮していかなければいけません。

 

 その学校にとって、あるべき校則を目指すべきであり、校則の見直しについては、”社会やルールも変えられる”と言う学びを生徒に獲得してもらう機会として、生徒の自主的な校則の改訂を後押ししていくべきでしょう。

 

 そのような観点から、NPO法人カタリバが取り組まれているルールメイキングは教育的な意義も非常に高く、大変参考になります。

 【参考】「校則が変わる、生徒が変わる、学校が変わる みんなのルールメイキングプロジェクト」

 【参考】月刊生徒指導2023年10月号

 

 利用したパワーポイントの一部を掲載しますので、ご関心ある方はご覧ください。講演やセミナーのご依頼があればお問い合わせからお願いします。