落語界の師弟間で起きたハラスメント事案!

 

 昨年から、旧ジャニーズ事務所の性加害問題、宝塚歌劇団や楽天ゴールデンイーグルスのパワハラ問題、有名芸人の性加害疑惑など、芸能界を揺るがすような問題が立て続けに表面化しています。

 

 そのような中、先日、落語界での師弟間におけるパワハラによる損害賠償を認める1審判決が出た旨の報道がありました。なお、判決が確定前であることにはご留意ください。

 報道内容を一部引用すると、以下の通りです。

 


「落語家パワハラ裁判」で元師匠に勝訴 元弟子が業界に「ハラスメント対策」を要望

1月26日、落語協会に所属する現役の落語家(原告)が元師匠(被告)から暴力や暴言などのハラスメントを受けたとして損害賠償を請求する民事訴訟の判決が出された。東京地裁は原告の訴えを認め、被告には80万円の支払いを命じた。


 

 判決では、落語の世界における”師弟関係”とは親子関係にも似た「濃密な人間関係」であると同時に、師匠の側は「絶対的な上位者」であると評価した上で、弟子に対する優越的地位を利用したハラスメントは社会的に許容されない旨判断したようです。

 

原告側の代理人弁護士によると、元師匠から受けたハラスメントとして指摘したのは、次の通りでした。

①自宅玄関前で、大声で罵倒する

②居酒屋で、他の客が通る階段に座らせてさらしものにする

③通行人が通る路上で暴力をふるう

④コロナ禍に、落語協会が感染防止のため「舞台が終わったらすぐに帰宅するように」と落語家たちに通達していたため、弟子も帰宅したところ、「師匠である自分を待たなかった」という理由で呼び出され、元師匠から殴られたり暴言をふるわれた

 

 今般、会社であればパワハラが大きな問題になることは周知の事実ですが、いまだに落語界のように特殊な業界では”指導のためには多少は仕方がない”かのような意識や慣習が残っています。あくまでも「指導・教育のため」と謳われるものですが、果たして本当にそのような指導方法をとる必要があるのでしょうか、それで人が成長するのでしょうか、そこをよく考える必要があるでしょう。

 特殊な業界であればあるほど、このような事案や報道を通じて、社会的には必ずしも許容できる情勢にないことを意識していく必要があるでしょう。

 

 このような特定の業界やコミュニティにおけるパワーハラスメントの問題は、その環境や文化によって異なりますが、落語界のように伝統的な芸能における課題は以下のように考えられるところです。

1  伝統との摩擦: 落語界は伝統的で厳格な構造を持っており、伝統を重んじるがゆえに、問題の発生や対処において保守的な態度が現れることがあります。

2  権力の不均衡: 落語界においては、先輩と後輩の関係や師弟関係が強く存在し、これが権力の不均衡を生み、権力を濫用される場面が起こり得ます。

3  閉鎖的なコミュニティ: 落語は独自の文化や言葉を有しており、これが業界内で閉鎖的な雰囲気を醸し出すことがあります。閉鎖的なコミュニティの場合、特に被害者が声を上げにくい状況が生まれやすいです。

 

 このような課題は宝塚歌劇団や野球界にも当てはまります。決して個人の問題として片付けるのではなく、構造上の問題として理解し、改善に努める必要があるでしょう。

 上記裁判自体は確定前ですが、裁判所に認定されたことを重く受け止め、伝統を尊重しつつも、現代社会の価値観や法的基準に沿った改革を進め、業界全体の改善を望むばかりです。