2023年8月5日、実に4年ぶりにリアルで高校生模擬裁判選手権が開催されました。闘いの場所は大阪地方裁判所、実際の法廷で模擬裁判がおこなわれました。
思いがけないコロナ禍により、リアル大会は中止となり、その後オンラインになりました。オンライン大会では、場所を問わないため、全国大会がひらかれ、全国の高校と対戦できたのはよき経験でした。とはいえ、やっぱりリアルが一番です。
関西大会では、裁判所の協力もえて、大阪地方裁判所の実際の法廷で模擬裁判をすることができます。これはなかなかできないことであり、得難い体験です。そして、法廷が醸し出す独特の雰囲気こそが、最高の模擬裁判の闘いを演出してくれます。
2022年、2023年とオンライン大会の模様はこのブログにも書かせていただいたのですが、思いのほか閲覧していただいている状況で、これは今年もしっかり書かなければという思いに駆られました。
今年も神戸海星女子学院高等学校を応援してきましたので、その様子をお届けします。
最後には結果もまとめておりますので、ぜひ、ご一読ください。
まず今年の関西大会の出場校ですが、以下の通りです。
・大阪府立北野高等学校(大阪)
・同志社高里高等学校(大阪)
・大阪府立三国丘高等学校(大阪)
・京都府立嵯峨野高等学校(京都)
・立命館宇治高等学校(京都)
・西宮市立西宮東高等学校(兵庫)
・神戸海星女子学院高等学校(兵庫)
・西大和学園高等学校(奈良)
・立命館守山高等学校(滋賀)
・近畿大学附属和歌山高等学校(和歌山)
関西では出場希望校が他にもたくさんありましたが、抽選と予選の結果、この10校が本戦出場を果たしました。
高校生模擬裁判選手権では、日本弁護士連合会の弁護士を中心に作成した毎年新作の模擬裁判事例をもとに、事前に各校において、支援弁護士のサポートを受けつつ、検討、準備します。
採点対象となるのは、証人と被告人に行う主尋問と反対尋問、検察側では論告・弁護側では弁論です。尋問では、論告や弁論という最終的な意見に向けて、どのような質問をして、どのような答えを引き出すかがポイントになります。最終意見の言わば前フリなわけですが、フリがきいていないと、意見は空振りに終わるので、とても大切です。尋問の結果を踏まえつつ作られる論告や弁論では、わかりやすい内容で、いかに論理的に有罪・無罪を説得的に説明できるかがポイントとなってきます。
弁護士が実務でもそうするように、事前に記録を読み込んで準備をすることはとても大切です。ただ、それだけではなく、本番ででてきた新しい事実を踏まえた対応ができるか、現場でのアドリブ力が鍵になってきます。また、高校生らしい発想や元気の良さなども結果に影響します。
審査員は、実務経験が豊富な弁護士・検察官・裁判官の法曹三者に加え、マスコミ関係者や学者の先生方が担ってくれます。皆さん、初めて担当される審査員はそのレベルの高さに驚き、感動されるのが恒例です。そんな言葉を聞いて、何となく私も誇らしい気持ちになります。
今年は久しぶりの法廷開催でした。始まるまでは落ち着いたリラックスムードの法廷も、関係者がそれぞれ席につき、裁判長が「それでは開廷します。被告人は前へ。」というと、空気がピシッと引き締まるのは不思議なものです。
午前、神戸海星女子の対戦相手は近畿大学附属和歌山高等学校でした。近大附属和歌山が検察側、神戸海星女子が弁護側です。
近大附属和歌山は共学ですが、この日の出場者は女子ばかりだったようで、女子対決となりました。
大人でも緊張するような場面ですが、双方の生徒たちは終始堂々と振る舞っていました。舞台度胸があります。特に、短く端的な質問をテンポよく繋いで答えを引き出していたのは、実務家に匹敵するレベルでした。証拠となった図面などを証人や被告人に見せて位置関係を明確にさせる質問はとてもわかりやすく、印象的でした。
近大附属和歌山の論告では、キーワードのテロップをどんどんホワイトボードに貼り付けていく演出があり、ビジュアル的に非常に工夫されていました。
対する神戸海星女子の弁論では、裁判員にペーパーを配りつつ、重要な証拠となる被告人のLINEメッセージのやり取りを1つずつ丁寧に意味付けしていったところが印象的でした。
午後は、西宮東高等学校との兵庫対決となりました。神戸海星女子が検察側、西宮東が弁護側です。
神戸海星女子は、例年、多くの生徒が参加しており、今年も協力しながら試合に臨んでいました。おそらく先輩たちの力と教員のK先生の人望によるものでしょう。
他方、西宮東は4人での参加でした。中心となるメンバーを他のメンバーが支えつつつ、検察側、弁護側双方の準備をし、やり切ったことはすごいことです。きっととんでもなく大変だったでしょう。
この法廷では、被告人役をつとめた方(偶然こちらも兵庫の弁護士でした)のキャラが非常に作り込まれていました。レゲエ好きでいかにもライブハウスを経営してそうな格好をし、素ぶりも仕上がっていました。兄弟みたいな関係を「ブラザー」と言ってみたり、自分に不利益な内容を証言する証人を睨んでみたりと、完全に憑依していました。
このような迫真的な法廷でしたが、被告人に強く反発されても、神戸海星女子の検察官は一切怯まずに淡々と質問を投げかけ、追い詰めていたのが印象的でした。
午前・午後とみて、これは入賞できたかもしれないと期待を秘め、結果発表を迎えました。
結果発表をされた弁護士も、なんと過去に高校生模擬裁判選手権に選手として出場されていたとのことでした。歴史ある伝統的な大会になりました。兵庫でも、そろそろ過去の出場者に、弁護士として再会できるかもしれません。
先に法廷ごとのMVP(審査員特別賞)が発表され、続いて学校ごとの順位が発表されました。
発表は4位以上!
ドキドキしている鼓動が聴こえそうな中、神戸海星女子は見事、3位で名前が呼ばれました。
初めて出場した時に4位入賞を果たしましたが、それ以降、リアル大会ではなかなか入賞もできなかったので、過去最高順位となりました。
驚いたのは優勝校です。まさかの初出場・初優勝でした!先輩からのノウハウや経験もない中で、優勝をかっさらって行ったのは素晴らしすぎます。ぜひ来年以降も出場して2連覇を目指し、他校はリベンジを目指して欲しいですね。
関西大会の最終結果は以下の通りでした。
第1位 大阪府立北野高等学校
第2位 同志社香里高等学校
第3位 神戸海星女子学院高等学校
第4位 西大和学園高等学校
試合終了後の交流会では、どの学校のコメントも、とても爽やかで、やり切った感にあふれていました。
「模擬裁判サイコー!」と叫んでくれた生徒がいましたが、観ているこちらが最高な気分になりました。運営に携わっていただいている先生方にとっても、これほどの言葉はないでしょう。
学生の皆さん、本当にお疲れ様でした。また、感動と青春をありがとうございました。