先日、顧問先であるマンション管理会社のご依頼で、マンション管理セミナーの一部講師を担当しました。
当日は日頃、各マンションの管理組合で理事等の役員として奮闘されている方々にお集まりいただきました。
マンション管理の問題はマンションにお住まいの方なら誰も避けては通れない問題であることはもちろん、本来、自分自身の資産価値そのものに直結します。
誤解を恐れずに言えば、銀行預金の利子を気にするよりも、もっと優先して気にすべき問題です。しかしながら、現状関心がうすい方が多く、役員を輪番制にしてもなかなか活動されない方もいて、残念なところです。
ここでは、改めて、マンション管理に関する法的な基本を整理しておきます。
本来、法律の原則としては、1つのものには1つの所有権があります。
例えば、スマートフォンには1つの所有権のみが観念できます。ただ、実際には、スマートフォンの中には多数の精密機器が搭載されているでしょう。
建物であっても戸建て住宅であれば当然1つの所有権のみです。
これに対して、マンションは構造上区分され、それぞれの部屋が所有権の対象となります。
これを法律上明確にして、保護しているのが「区分所有法」です。
マンションの各部屋を、「専有部分」と位置づけ、当該部分についての「区分所有権」を認めています。
他方、マンションには「専有部分」以外にも区分所有者が共同して使う部分があります。これを「共用部分」とし、共有して管理することを認めています。
「共用部分」の代表が玄関ホールやエレベーターです。しかし、実はそれ以外にも、一見部屋に付属している「バルコニー」「ベランタ」「玄関ドア」「内外壁」なども「共用部分」です。あくまでも「専有使用権」という専属的に使用する権利が認められているにすぎません。そのため、当然には改良工事などをおこなうことはできないのです。
このような法律の定めはあくまで最低限のルールです。重要なことはむしろマンションの管理規約で決めることが求められています。個々のマンションの「専有部分」や「共用部分」の管理や利用のルールを管理規約でしっかりと決める必要があるのです。
マンションの部屋の所有権を持つ区分所有者は、区分所有法上、2つの義務を負っています。
1つが管理費を支払い義務、もう1つが共同の利益に反するような行為をしない義務です。
マンションを適切に管理維持していくためには、管理費の支払い・回収が不可欠です。管理費や修繕積立金の滞納が長期化すると経済的にはもちろん、管理組合間でも不満が溜まり、関係性にも影響しかねません。引いては自分たちのマンションの価値を棄損することになり、自らの首をして目てしまうことになります。そのため、早め早めの対策が必要であり、まずは話し合いをし、回収するための現実的な協議が必要です。
また、マンションでは共同の利益に反するようなことは許されません。共用部分はもちろんのこと、いくら部屋が自分の持ち物であっても、多数の方が一緒に居住している以上、共同の利益に反するような利用は認められないのです。もしこれを害するような利用をしている場合には、管理組合としての対応が必要であり、迷惑行為への対処が求められます。これも管理費の滞納と同じように、自らの財産価値を守るための行動と言えます。
これらは区分所有者の義務であると同時に、
裏を返せば、マンションの価値を維持するために果たすべき管理組合の役割でもあります。
当事務所には経験豊富なベテランのマンション管理士もいますので、お困りの場合は是非ご相談ください。