『株式会社は誰のものか?』
時に議論を巻き起こすようなお題ではありますが、少なくとも法律上の答えは1つしかありません。
株式会社は株主のものです。出資者である株主は会社のオーナーであり、代表取締役や取締役もその株主から経営を託されているに過ぎません。
これがオランダ東インド会社から歴史的に引き継がれ、現在の会社法の考えている株式会社です。
株主というのは、自分が出資した金額の範囲でのみ責任を負う一方、会社の経営を決める議決権と企業経営による利益の還元を受ける権利を持つのです。
(株主の責任)
そして、株主たちが意思決定をする合議体として存在するのが株主総会です。株式会社の運営の根幹に関わることは、株主総会で決めなくてはならないのです。
これに対して、株主たちから会社の経営を託された代表取締役を含む取締役は、あくまでもその経営判断の範囲でのみ会社のことを決められることになります。
(株主総会の権限)
このことから、株を取得すると言うのは、株式会社の経営への影響を高め、ついには経営権を取得する行為そのものになるわけです。
ある株式会社をグループ会社に入れたり、子会社にしたり、時に業務提携する方法としても、株式を取得すると言う方法が使われ、その際にどのような方法をとるかが考えられるわけです。
このような時に株式交換やTOB(株式公開買付)などの方法が使われます。
このあたりのM&Aあたりのことは、会社法を勉強し、条文をいくら読んでもなかなかイメージできず理解できないところです。
そこで、最近のニュースを紹介して解説していきたいと思います。
「関西が地盤の中堅スーパー、関西スーパーマーケットの経営権取得をかけた争いが激化している。8月末、関西スーパーの筆頭株主、エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングが関西スーパーを傘下に収める方針を発表すると、9月3日には首都圏が地盤のスーパーで、第3位株主のオーケー(横浜市)が関西スーパーの買収方針を表明。争奪戦の行方は、関西スーパーが10月下旬に開く臨時株主総会で一定の結論が出る。企業価値の向上にどうつながるか、株主を納得させる説明が求められそうだ。・・・」
報道によりますと、関西では有名な阪急阪神百貨店や阪急オアシス、イズミヤなどを傘下におくH20リテイリング(以下、「H2O」と言います)が、関西でスーパーを展開している関西スーパーを傘下に入れる方向で現経営陣間で合意にいたったとのことです。
そして、その方法としては、H20親会社として株式の50%以上を持っている持株会社が、関西スーパーの株式を100%株式交換によって取得するという方法です。会社法上の株式交換であり、株主総会の特別決議(過半数の出席+出席株主の3分の2以上の賛成が必要)が必要な方法です。
そのため、現経営陣では有効的に合意していますが、あくまでも会社の根幹に関わることですので、会社のオーナーたる株主の66.6%を超える賛同が必要となり、10月下旬に開催される株主総会の議案として提案されることになったわけです。
ただ、これには裏の事情がありました。
実はOKという関東でディスカウントスーパーを経営する会社が、少しづつ関西スーパーの株を取得していき、事前に買収をもちかけていたというわけです。関西スーパーの経営陣はこれを拒否していますので、敵対的買収ということになります。
そういう意味では、このH2Oの傘下に入るというのも、買収防衛策の1つであったと言えるでしょう。
そして、これに対して、関西スーパーの株を7%持っている株主のOKはこの株式交換には反対する意思を表明しつつ、もしこの議案が株主総会で否決された場合には、改めてTOB(株式公開買付け)(金融商品取引法27条の2〜)によって買収をし、子会社とする方針を示しました。「否決されたら」という意味では条件付きではありますが、実際には株主総会に向けた票の争奪戦が繰り広げられているかもしれません。
関西スーパーの株を一定する持っている会社は取引先も多いようで、そのような会社は現経営陣に配慮して賛成に回るかもしれません。
他方で、個人株主からすれば、この株式交換が可決すればH20の株式に交換してもらえることになりますし、否決されれば関西スーパーの過去最高値の1株2250円でOKに買い取ってもらえることになり、どちらがメリット大きいかを考えて、賛否を決めることになるでしょう。
元経営陣が、前者の方針で株主を説得するためには、H20の傘下に入ることによるH20含めた企業価値の向上について、どこまで説得的に語れるか、1つの鍵になるでしょう。
(株主総会の決議)
なお、会社法上の株式会社の本質的な部分については、以下の動画(弁護士松田昌明のLAW TUBE)で解説していますので、ご参考までに。
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