インプットする法律知識とアウトプットする法律文書
受験後も長年指導にたずさわってきました。
今も、ロースクール生の法律文書の添削をしています。
添削をしていて特に気になるのは、5人中1〜2人ほどは、そもそも法律文書の最低限のルールである「法的三段論法」を理解していないと思われることです。
そういう方の良くない文書の特徴として、
①圧倒的に少ない条文の指摘、
②作文や小論文になりかねない論理的根拠の少なさ、
③解釈論というより立法論に近い理由付け
が挙げられます。
インプットが進めばアウトプットも進める必要があります。アウトプットのイメージができることでインプットのメリハリが付けられます。これらは両輪として相乗効果をもたらすのです。
「よい」法律文書と法的三段論法のポイント
まず、法律文書にとって必要なことは、読み手(添削者)にとって、「読みやすい論理的な文章である」ことが挙げられます。
「読みやすさ」のテクニックとしては、
❶1文を短くする
❷ナンバリング(第1→1→(1)→ア)をして、適切なタイトルをつける
❸法律要件ごと、法解釈と事実認定を分けて書く
❹接続詞を適切に使う(無理に付ける必要はない)
ex.「確かに→しかし→したがって」、「まず→次に→さらに」
などがあります。
次に、「論理的な文章」であることが、作文との違いです。裏を返せば、論理的でなければただの作文になってしまいます。
この論理性を支えるものこそ「条文」と「法的三段論法」なのです。
条文こそ法律家の拠るべきものであり、法律家の文章は条文に立脚して論じることで、高度な論理性を供えるのです。
そのため、適切に関連する条文を根拠として示し、その文言を引用することが求められるのです。
そして、「法的三段論法」とは、「大前提(=法解釈)」に「小前提(=事実認定)」を当てはめて結論を導くというものです。
これは大昔から伝承されている演繹法と言われる考え方を法律に転用したものです。数学で学んだ帰納法とは対になる方法です。
演繹法というのは次のようなものです。
【演繹法】
「人間は必ず死ぬ」
↓
「ソクラテスは人間である」
↓
「ソクラテスも必ず死ぬ」
これを法律に転用すると、
「大前提(=条文・法解釈)」に「小前提(=事実認定)」を当てはめて結論を導く
ということになります。
このうち、「大前提=条文・法解釈」部分では条文がそのまま適用できる場合もあります。
ただ、条文の文言というのは必ずしも一義的ではなく、あえて抽象的な文言で規定し、
一定の適用幅があることもあります。
そのような適用の有無が問題になる場合には、条文の解釈論を展開した上での規範定立が必要になります。
他方、「小前提=事実認定」については具体的な事実関係が問題になりますが、
事実認定の過程は司法試験では問われていません。
実務に入ればここが非常に重要な争点になりますが、司法試験では与えられている事実関係がそのまま小前提となります。
ですので、具体的に答案に書く場合は次のとおりの流れとなります。
これを事例を通じてアウトプットし、マスターしましょう!!
大前提=条文・法解釈
❶ 問題提起(条文の指摘!)
関連法令・条文を的確にピックアップし、どの条文のどの文言が問題になるのか、文言をかぎかっこで引用して指摘する
❷ 規範定立(許容性の指摘!)
その解釈について、必要性+許容性(あくまで許容性が重要)の観点から理由を述べて、抽象的な規範を定立する
※ 許容性→条文解釈として許される、限界を超えていない、枠内であること
→これがなければ法律の適用ではなく、ただの立法論!!
小前提=事実認定 → 大前提へ小前提を当てはめ
❸ 当てはめ(規範に当てはめる!)
規範に具体的事実を当てはめて結論を導く。
*Amazon Kindle出版*(Kindle unlimitedなら無料で読めます)
「後回しにしがちな民法・親族法の本質を最短で理解する本 〜親族法を理解する15のポイント〜」
https://www.amazon.co.jp/dp/B09X6GYC7L/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_KTE2V5KY93HJWR8JMB33?_encoding=UTF8&psc=1
「流れをつかみにくい民法・相続法の本質を最短で理解する本 〜相続法を理解する15のポイント〜」
https://www.amazon.co.jp/dp/B09YPB8X16/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_B4YJNGKSWS057WZ19J7F?_encoding=UTF8&psc=1
(関連する人気記事)
コメントをお書きください