フジテレビの社長が中居正広さんを巡る問題で会見、調査委員会設置へ!

 本日、フジテレビジョンの社長は記者会見(ただし、一部に記者は限定されたようである)を開き、タレントの中居正広さんと元社員との間のトラブルに関して、外部の弁護士を中心とする調査委員会を立ち上げると発表しました。

 

 これに関しては、大株主の米ファンド、ダルトン・インベストメンツが1月14日付で親会社のフジ・メディア・ホールディングス(HD)に対し、第三者委の設置を要求する書簡を送付し、「コーポレートガバナンス(企業統治)の観点から欠陥がある」と指摘した経緯があります。

 

 

 このような企業や団体の不祥事が発生した場合、調査委員会を立ち上げることが通例になっています。

 しかし、調査委員会と一口にいっても、その種類はいくつかあり、内実は大きく異なります。

 

 調査委員会の種別や第三者委員会のあり方については、日本弁護士連合会が定める「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」に詳しく書かれています。ここでは一部を抜粋・参照しつつ、整理してみます。

 

 まず、①当該企業等の経営者が、担当役員や従業員等に対し、内々の調査を命ずるものです。コンプライアンスが企業に求められる以前はこのような内部の人員で構成された調査委員会による内部調査がほとんどでした。最近でも問題によってはこちらで済ませることもあるでしょう。

 

 しかし、このような調査は、自ずと経営者に忖度した調査結果になりがちである上、仮にそうでなかったとしても、調査の客観性への疑念を払拭できません。これでは結局いくら調査をしても、不祥事によって失墜してしまった社会的信頼を回復することにはつながりません。

 

 

 そのため、②企業等が弁護士に対し内部調査への参加を依頼することによって、外部者を交えた調査委員会を設けて調査するものが増えています。こちらも広い意味では、内部調査委員会と呼ばれます 。

 弁護士が参加しているとはいえ、経営者のための調査になりがちな部分は否定しきれません。また、往々にして、調査に参加する弁護士は無関係の第三者ではなく、顧問弁護士の弁護士であることもあります。このような場合、外部の人間ではあるものの、利害関係があり、企業にとっての不利益が弁護士や法律事務所にとっても不利益になる関係性が根底にあることになります。

 

 記憶にも新しいところですが、宝塚歌劇団の当初の調査も、外部の弁護士を加えた内部調査委員会による調査が行われたのは記憶にも新しいところです。ただ、結局、この調査結果にはご遺族からも、一般の方からも強い不信や反発を招きました。そして、ご遺族からの強い要請を受け、第三者委員会による再調査が行われ、結論も大きく修正されました。

 【参考】独自解説「”外部の弁護士”に依頼した”内部調査”」「劇団側の信用性・信頼性は失われてしまった」宝塚歌劇団の調査結果に専門家指摘「再度第三者委員会での調査必要」(2023年11月16日読売テレビ)

 

 これに対し、③企業等から独立した委員のみをもって構成されるのが「第三者委員会」です。この場合、徹底した調査を実施した上で、専門家としての知見と経験に基づいて原因を分析し、必要に応じて具体的な再発防止策等を提言することになります。

 第三者委員会による調査は、経営者等自身のためではなく、すべてのステーク・ホルダーのために調査を実施し、それを対外公表することで、最終的には企業等の信頼と持続可能性を回復することを目的とするのが、この第三者委員会の使命とされています。これはある意味、第三者委員だからこそできることであり、独立性や第三者性があるからこそ、その結果も受け入れられる土壌があると言えます。

 

 

 このような観点でフジテレビのケースを見てみましょう。

 

 報道機関によって表現が違いますが、記者会見の一問一答(NHK【記者会見詳細】フジテレビ社長 記者とのやり取りQ&A )によると、「第三者の弁護士を中心とする調査委員会を立ち上げる」と明言しているようです。

 

 報道によっては、「外部の弁護士を中心とする調査委員会」と表現しているものもあります。これでは全く意味が異なってきますが、冒頭の説明文では、「外部の弁護士の助言を受けながら、社内で確認を進めてきました。」「第三者の弁護士を中心とする調査委員会を立ち上げることとしました。」と使い分けているようですので、独立性を有した第三者たる弁護士を選任しようとする意図はあるようです。

 ただ、一方で、「現時点では、日弁連のガイドラインに基づく第三者委員会ではないと思いますが、これから弁護士たちにお願いして調査委員会立ち上げますので、そのときに正式にこういう形でとなると思います。なので、そのときにすべて発表します。なぜこういう形にしたのか。なぜ第三者委員会でないのかということも含めてそのときにお話しできるかと思います。」「まず今回、独立性、専門性が高い人たちを選びます。なので、実態としては客観性が担保されていますし、透明性も担保されている。そういうような委員会になる。それは間違いありません。そのうえで調査委員会の方々に相談したうえで、じゃあ第三者委員会にしよう、調査委員会にしようというのを決めると思います。」とも回答しており、どちらとも言えない回答にとどめています。

 現段階では詳細は不明ですが、可能性としては、当初より助言していた「外部の弁護士」が調査委員会に入ることが想定されるでしょう。ただ、それによって、いったん第三者性が失われた委員会が構成されてしまえば、新たに選任された弁護士も含めて第三者性は失うことになります。

 

 今後、まずは委員の構成や調査範囲などがどうなるか、見定めておく必要があるでしょう。