遺産分割するにあたって、相続財産の評価方法をみてみよう!

 

 遺産分割を進めるにあたっては、法定相続人たちが、各人の法定相続分をベースとして、誰が何を相続するかを決めていく必要があります。

 

 遺産分割の流れについてはこちらの記事をご覧ください。

 ”遺産分割の流れと注意点を確認しておこう!”

 https://www.kobengoshi.com/bunkatsu/

 

  遺産分割協議を進めるには、各財産の評価をして誰がどれだけ取得するかを決め、法定相続分に照らして配分を決める必要があります。

 そのため、相続財産を評価することが重要です。ここでは、財産の種類ごとに評価基準を見ていきましょう。


1 不動産

 不動産の評価は、以下の方法が用いられます。

 相続人間で調整し、いずれかを採用したり、いくつかの方法を参照して調整していくことになります。

 不動産の評価は方法によって上下の幅が大きく、立場によって有利な考え方が異なるため、争いとなることも多いでしょう。

 

①固定資産税評価額

固定資産税の課税標準額として自治体が決定する評価額です。

ただし、実勢価格よりは低額になります。固定資産税評価額は、公示価格の70%程度と言われることも多く、当該評価額を0.7で割った金額を評価額とすることも考えられます。

 

②路線価

国税庁が公表する路線価(1㎡当たりの価値)を基準に計算します。相続税申告時の評価額の基準となることも多いでしょう。

計算例:路線価 × 土地面積

ただし、こちらも実勢価格よりは低額になります。路線価は、公示価格の80%程度と言われることも多く、当該路線価を0.8で割った金額を評価額とすることも考えられます。

 

③公示地価・基準地価

公的機関が発表する指標で、実勢価格に近いとされます。

 

④実勢価格

実際の取引価格や不動産業者の査定額に基づく評価です。

 

 

2 金融資産

  金融資産の評価は比較的明確であり、評価額自体が争いになることは少ないでしょう。

 ただし、非上場株式は評価額が一概に決まるものではなく、争いになることがあります。

 

・預貯金、投資信託

相続開始日の残高が評価額となります。その後、変動があれば分割時の残高を基準に分割することになるでしょう。銀行等から残高証明書を入手して金額を確定させることができます。

 

・株式

①上場株式:相続開始日またはその前後3か月の平均株価を基準に評価します。その後、変動があれば、遺産分割時の評価を基準にすることも考えられます。

②非上場株式:会社の純資産や利益、配当実績などを基に評価します。これについては、類似業種比準方式や純資産方式など評価方法は複数あり、決算書の分析等が必要になる場合もあります。評価方法が複数あり、それによる振れ幅もあるため、争いになることがあります。

 

3 動産

 

・自動車

中古車市場での査定価格や減価償却費用を考慮して評価します。

 

・貴金属・宝飾品

現在の市場価格や専門家の鑑定額を基準にします。

 

・家具・家電など

不動産も併せて取得する場合などは細かく算定しないことも多いでしょう。

評価するとすれば通常は時価評価ですが、相続人間で合意できれば特別な評価を用いることもあります。

 

 

4 生命保険金

 

 生命保険金は受取人が指定されている場合、受取人固有の財産となり、原則として相続財産に含まれません。

 ただし、「みなし相続財産」として相続税の課税対象には含まれることになり、扱いが異なりますので、ご留意ください。

 

 

5 借入金・負債

 

 相続財産に含まれる借入金や未払い金などは、額面通りの評価が原則となります。

 なお、遺産分割協議で、法定相続分とは異なる割合で負担を決めることは可能ですが、それは債権者からは預かり知らないことになるので、その負担割合を当然には主張できないことに注意しましょう。

 

 


※相続税申告時と遺産分割時との相続財産評価の違い

相続税申告時の相続財産の評価と遺産分割時の相続財産の評価とでは、目的が異なるため、評価方法や評価額も異なってきます。具体的には次の点には注意しましょう。

 

【相続税申告時】

不動産: 路線価(または固定資産評価額の倍率方式)を用います。実際の市場価格より低くなることが多いでしょう。

上場株式: 相続開始日の終値、または過去3カ月の平均値など、税法で定められた方法で計算します。

預貯金: 相続開始時点の残高に基づく評価。

 

【遺産分割時】

不動産: 路線価ではなく、実勢価格(市場価格)を考慮することが多いでしょう。

上場株式: 現在の時価(相続開始時よりも変動がある可能性)。

預貯金: 基本的には相続開始時点の残高が基準ですが、特定の事情で調整される場合もあります。