1 GoogleMapとビジネスプロフィール
GoogleMapには店舗や施設等の情報が自動的に(運営者の承諾なく)追加され、Googleアカウントさえあれば、誰でも口コミをかけるようになっています。
Googleは、ある時から地名等を含めてGoogle検索をした時に、GoogleMapを上位に表示するようになりました。その結果、閲覧される機会も非常に多くなり、口コミの影響力も増しています。
もちろん全てが信憑性をもって受け止められるわけではないでしょうが、行こうとしている店舗や施設のレビューは目に入りしますし、内容が本当らしいものであれば気になるものです。
特に何も対策をしていなければ、良い口コミを書いてもらえることは少なく、むしろ悪い口コミは積極的に書かれてしまうものです。これはSNSやインターネットにおける人間の心理が反映されたものと言えるでしょう。
他方、事業者としてはGoogle Mapの検索結果がなるべく上位に表示されるようにしたいと考えるものです。この事業者側がGoogle Map内の自社のページのことをGoogleビジネスプロフィールと呼びます。事業者はこの管理をそのために多額の費用をかけて業者に依頼することもあるようです。このような上位で検索されるようにすることについては、SEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)と対比して、MEO(Map Engine Optimization:マップ検索エンジン最適化)と呼ばれます。
業種としては、飲食店やホテル、エステサロン、病院や歯科医院などにとっては特に重要で、影響力が大きい媒体と言えるでしょう。
この中でも特にその性質上、悪い口コミが書かれやすい業種の1つが病院や歯科医院などの医療機関です。
まずは医療機関をめぐる裁判例のニュースを見ておきたいと思います。
2 病院等医療機関をめぐるGoogleMapレビューへの書き込みと裁判
①”グーグル口コミに削除命令 中傷投稿で東京地裁支部”(2024/3/26付共同新聞)
こちらの報道によると、「グーグルマップ」の口コミで不当な中傷を投稿されて名誉を傷つけられたとして、動物病院の運営会社が投稿記事の削除などをグーグルに求めた訴訟について、東京地裁立川支部は投稿の一部を消すよう命じました。
投稿者は、2020年から22年9月ごろにかけて、口コミに「表に出ないだけで、誤診も複数ある」などの事実ではない複数の投稿をしており、香川礼子裁判官は、投稿の一部について、「原告の社会的地位を低下させるもの」と認定しました。その上で内容も真実と認められないなどとし、名誉毀損に当たり削除が認められるべきだと判断しました。一方、マップの管理者であるグーグルが投稿の真偽を判断するに足りる情報はなく、原告の権利が侵害されていると知っていたとは言えないとし、損害賠償請求については認めませんでした。
②”「勝手に目にレンズ。最悪」グーグルマップに悪評口コミ、投稿者に200万円の賠償命令”(2024/6/3付毎日新聞)
こちらの報道によると、兵庫県尼崎市で眼科を運営する医療法人が、発信者情報の開示を求める訴訟提起を経た上で、投稿者に口コミの削除と200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が5月31日付けで大阪地裁であり、山中耕一裁判官は請求通り、口コミの削除と賠償を命じました。
判決によると、投稿者は、この眼科について「勝手に右目はレンズを入れられていました。最悪」「何も症状もないのにまた勝手に一重目蓋にされました」「他の眼科へ行くことをお勧めします」などと投稿していました。
判決理由で山中裁判官は一連の投稿について「患者から適切に承諾を得ることなく勝手な医療行為をするとの印象を一般の閲覧者に与えた」として名誉毀損を認定しました。
③”グーグルに口コミ削除命令 マップへの投稿「社会的評価を低下させる」東京地裁”(2024/6/26付産經新聞)
こちらの報道によると、愛知県豊田市の心療内科の院長が、運営するグーグルに投稿削除を求めた訴訟の判決で、東京地裁は26日、削除を命じた。
判決によると、投稿者による口コミには「朝一番はドクターの機嫌が悪い日が多い」「医療サービスを受けるというよりは、ドクターからの精神的圧力を楽しむことが可能な非常に珍しい心療内科」などと記載されていました。
宮川広臣裁判官は、投稿者が診療を受けたと書き込んだ日が休診日だったことを根拠として内容は虚偽と判断、「社会的評価を低下させるものだ」として削除の必要性が認められると結論を出しました。
3 Google MAPレビューの予防策と対応策
このように病院や歯科医院などの医療機関等には実際に事実無根な誹謗中傷や営業妨害に当たるような書き込みが多く、相談を受ける機会も多いです。
このような書き込みへの有効策としては、まずは何よりも予防が重要です。
①まずは始めに管理者としてGoogleビジネスプロフィールの登録をし(電話番号等の確認で簡単に登録可能です)、そのページに管理者が存在することがわかるように体裁を整えること、これが第1段階です。
実際の場所でも管理者がいない場所というのは荒れやすく、無法地帯にあるおそれがあります。WEB上も同じですので、まずはしっかりと管理された場所であることが伝わるようにしておくことです。特に、レビューが一度あれ出すと、心理的に悪評を書きやすくもなりますので、荒れる前に先手をうって管理していくことが大切です。
②次に、その延長として、レビューに返信をすることです。良いレビューへの返信は誰しも気持ちよく書きやすいものですが、重要なのは悪いレビューに対する返信です。GoogleMapのレビューを見る方はあえて悪いレビューのみを見ることも多く、その対応ぶりが良くも悪くも評価に影響します。明らかに言いがかり的な内容であれば、見られる方もスルーしますが、一見ありうるような内容ですと、しっかり返信しておくことが大切です。大事なのはあくまでも返信含めたその投稿を見た潜在顧客がどう思うかです。
③それでもなお実際に書き込まれた場合ですが、その内容が評価や論評にとどまるものか(「料理がまずい」「態度が悪い」程度の主観的な評価にとどまる場合)、その範囲を超えて誹謗中傷したり脅迫したり、また個人のプライバシーを侵害したり、事実無根の内容によって営業を妨害したりするものかの判断が重要です。後者に当たる場合にはまずは管理者であるGoogleに対して削除要請をすべきです。
ただ、Googleも簡単には事実かどうか判断できないとして応じないことも多く、その場合には、Googleに対して削除を求める訴訟を提起するか、発信者情報開示請求をして投稿者を特定して削除や損害賠償請求訴訟を提起するかしていく必要があります。
とはいえ、これらの法的措置までするのは費用的にも労力的にもオススメはできませんので、やむを得ない場合をのぞき、予防等の対応策でリスクを低減化することをオススメします。
なお、GoogleMapの見映えをよくするために、来店したこともない方にお金を払ってレビューを書かせるような行為は規約に反することはもちろん、ステルスマーケティングとして規制されていますのでご注意ください。現に、消費者庁が、医療法人に対し、Googleマップの口コミ投稿欄において、来院者が投稿した星5(★★★★★)の表示が、ステルスマーケティング告示に違反するものとして、措置命令を行った事案があります。
4 GoogleMapに対するリーガルサポート
当職のもとにも、病院等の医療機関からGoogleMapレビューに関する相談が寄せられることが多くあります。
このような状況から、主に医療機関向けにGoogleMapのレビュー管理に特化したリーガルサポートを始めることとしました。
まずはご相談いただき、当職において、GoogleMapの状況を精査させていただきます。
その上で、法的な観点からGoogleへの削除要請できる可能性があるものをピックアップし、対象レビューについてご相談の上、Googleへの削除要請をします。これらの相談料や精査料を含む着手金として3万円+消費税をいただきます。そして、実際に削除が認められる場合にはレビュー1件当たりの報酬として3万円+消費税をいただきます。
削除要請で対応できないレビューに対しては、レビューへの返信文案を作成します。こちらは法的な観点から、事実として認めるべき部分と認められない部分選別しつつ、かつ、閲覧者に好印象を与えるような文案を作成します。こちらは1件当たり1万円+消費税をいただきます。
他方、すでにある分の対応できはなく、今後のレビュー対応を希望される場合には、日本全国当面月額3万円(消費税別)で継続的にお受けすることも可能です。
こちらのサービスでは、継続的に以下の業務を対応していくこととなります。
①Google Mapに関する相談全般(チャットワークやオンライン相談含む)
②Googleビジネスプロフィール内に弁護士名等の記載(※抑止力が期待できます)
③レビューへの返答文の作成やチェック(特に悪いレビューに対するもの)
④管理者代理人としてのGoogleへの削除申請(代理人弁護士として対応)
※Googleや発信者に対して訴訟を提起する場合には別途料金が必要ですが、この場合には通常より30%引きの料金となります。
法律事務所は必ずしもGoogleMapのレビューが重要な業態ではありませんが、当職もGoogleMapの整備やMEOには力を入れており、「神戸 弁護士」で検索すれば六甲法律事務所(弁護士松田昌明)が一番上位に表示されるようになっています。
ご興味ある方は一度、お問い合わせください。