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近時、不動産のオーナーが変更となったことを機に、管理会社も変更され、一方的に賃料の大幅な増額を要求されるケースが増えています。
また、賃貸借契約の更新時に、賃料の大幅な増額を通知されたという相談も少なくありません。
今回は、こうしたケースに直面した際にどのように対応すべきか、法律的な観点から解説します。
1 賃料増額に従わなければならないのか?!
結論から言えば、不動産の所有者=賃貸人が、賃借人の同意もなく、一方的に賃料を大幅に引き上げることはできません。
賃料は賃貸借契約の重要な内容ですので、あくまでも賃貸人と賃借人が協議して決めるべきものだからです。
ただ、借地借家法上、正当化される場合は、一方的に一定の範囲で賃料増額をすることができる場合があります。
それは、現行の賃料が「不相当」になった場合です。
「不相当」というためには、
当初の賃貸借契約時と比較して、
①土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減:当初の賃貸借契約時と比較して固定資産税が増減した
②土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済的事情の変動:当初の賃貸借契約時と比較して不動産の価値自体が上下した
③近傍同種の建物の借賃の比較:周囲の賃料と比較して安いあるいは高い
などを総合的に考慮することになります。
「オーナーが変わったから」「収益を上げたいから」という理由だけで増額することはできません。
仮に上記①〜④を考慮して増額ができる場合であっても、賃料を増額できる範囲も正当な範囲に限られていますので、賃料をいきなり2倍にするような極端な増額はまず認められないでしょう。
ただ、そもそも一定期間賃料を増額しない旨の特約がある場合には、賃料増額請求は認められません。賃貸借契約書の内容は確認しておきましょう。
2 賃料増額請求に対する適切な対応策
①まずは拒否して、一定の譲歩も視野に交渉する!
一方的に賃料の増額通知を受けた場合、まずは一方的な増額には応じられない旨を伝え、賃貸人と交渉することが重要です。
特にもともとの賃料が相場よりも安い場合などは一定の増額が認められる可能性もありますので、一切拒否するのではなく、一定の譲歩を示すことで双方納得できる落としどころを見つけやすくなる場合もあるでしょう。
ただ、ここは相手の思惑を読みながらの交渉にはなりますので、不安があれば早めに弁護士に相談しましょう。
②賃貸人からの調停を想定し、対応する!
賃料増額について双方の合意が得られない場合、賃貸人から、裁判所に増額請求の調停を申し立てることが想定されます。交渉がまとまらない場合は調停になることを想定し、調停にも対応していきましょう。
③交渉が負担な場合は早めに弁護士に委任する!
賃貸人との交渉が負担になる場合は早めに弁護士に相談し、対応を委任するのが望ましいです。弁護士を通じて交渉することで、より有利な条件で解決できる可能性が高まるでしょう。
3 まとめ
不動産オーナーの変更後に賃料増額を要求された場合でも、必ずしも従う必要はありませんが、一定の範囲では賃料増額が認められるリスクもあり、見極めが重要です。
まずは契約内容を確認し、賃料増額が認められる可能性を見極めつつ、いったんは増額を拒否しつつ、交渉していくのが望ましいでしょう。
状況によっては弁護士に相談することで、よりスムーズに解決へと進めることができます。