遺産分割の流れと注意点を確認しておこう!

 

 遺言書がない場合、法律上定められた相続人が、法律で定められた取り分(法定相続分)をもとに、遺産分割協議を通じて、相続人全員の合意を得て遺産を分割することになります。

 

 ただ、相続や遺産分割というのは、人の一生においても、そう経験するものではありません。ここでは細かいところは一旦おいておいて、全体の流れと重要なポイントについて、押さえておきましょう。

 

 

 

1 遺産分割協議の流れ

①相続人の確定

 まずは法律上の相続人を確定する必要があります。

 そのために以下の書類を準備します:

・被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本(出生から死亡までの全て)

・相続人全員の戸籍謄本

・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票 

 

 これらをもとに相続関係説明図(家系図のようなもの)を作成し、法定相続人となる者を特定します。

 被相続人の配偶者は常に相続人となります。

 他方、配偶者とともに第1順位では被相続人の子(養子を含む、子が既に亡くなっている場合その子(孫)が代襲相続できる)、子がいなければ第2順位では直系尊属(被相続人の親や祖父母)、子も直系尊属もいなければ第3順位では兄弟姉妹が相続人となります。

 

 法定相続分については、以下のとおりです。

 ・配偶者と子が相続人の場合→配偶者:1/2 子:1/2(子が複数いる場合は均等分割)

 ・配偶者と直系尊属(親など)が相続人の場合→配偶者:2/3 直系尊属:1/3(複数いる場合は均等分割)

 ・配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合→配偶者:3/4 兄弟姉妹:1/4(複数いる場合は均等分割)

 なお、配偶者がいない場合は、子、直系尊属、兄弟姉妹の順に全額を相続します。

 

②遺産の範囲の確定

 次に、分割の対象となる被相続人の財産と負債を明確に整理します。

 具体的には以下の財産が想定されるでしょう。

・財産:預貯金、不動産、有価証券、動産(車など)

・負債:借金、未払い金、保証債務など

 

 整理をするためには、不動産登記簿謄本や銀行や証券口座の取引履歴や残高証明書などの資料の収集が不可欠です。

戸籍等を準備し、相続人という立場で各所に照会をすれば原則として書類等を提供してもらえるでしょう。

 

③遺産分割の協議

 これらが確認できれば、相続人全員で話し合い、遺産をどのように分けるか決定します。話し合いといっても、全員がそろって実際に話をしなければならないわけではなく、電話で個別に話しても、書面でやり取りをしても構いません。協議の方法は問わず、最終的に話し合いの結果、相続人全員が合意できれば良いことになります。

 この協議では、具体的に、誰が遺産のうちの何をどれだけ取得するかを決めることになります。

 1つの基準として、法律が定めた上記法定相続分があります。それぞれの財産を評価した上で、法定相続分を基準にすることが多いでしょう。ただ、相続人間で合意すれば、自由に分配割合を決めることも可能です。

 

④遺産分割協議書の作成

 全員の合意が得られたら、「遺産分割協議書」を作成します。この書類は、相続人全員の署名および押印(実印)が必要です。

 また、全員が実印を押した上で人数分の原本と印鑑証明書を準備し、各人が遺産分割協議書の原本と全員分の印鑑証明書を保有するようにしましょう。これらの書類が揃っていなければ、不動産の登記変更や銀行の払い戻しなどの対応をしてもらえない可能性があるので注意してください。

 

2 遺産分割協議の注意点

①相続人全員の同意が必要:相続人の1人でも同意しない場合や1人でも欠けている場合、協議は成立したことにはならず、有効ではありません。仮に相続人の1人が行方不明であっても、その人を含めずに協議書を作成しても有効ではありません。この場合には、特殊な手続きが必要となります。

 

②弁護士への相談:遺産が多岐にわたり、その評価や分け方で相続人間で意見が分かれる場合は紛争となることが多いでしょう。感情的なもつれが元々ある場合など、一旦揉めてしまうと話し合いは進まなくなります。このような場合にはできるだけ早めに弁護士に相談することをお勧めします。

 

③税務申告:相続税の申告期限は、被相続人の死亡を知った翌日から10か月以内です。早めに税理士に相談して進めるようにしましょう。